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不動産登記って何?

不動産登記って何のための制度

日常で不動産(建物・土地等)の取引を頻繁に行う方はそんなにいないと思います。
それでも、皆さまのライフサイクルの中で一度は不動産(建物・土地等)を購入することがあると思います。
不動産は、登記制度によって「どこにある」とか「誰がもってる」とかが公開されています。
登録の管理と公開は法務局が管轄官庁になります。法務局なんて行ったことがない方が大半だと思います。
最近のニュースでは、土地所有者の所在不明問題とか相続登記の義務化について報じられますが
なんで必要なのかと、よく分からないから誰に頼めばやってくれるのだとか
そんなことを簡単に説明させていただきます。

1.不動産登記制度の沿革

 不動産登記の記載事項は、法務局で不動産登記事項証明書を取得することによって誰でも確認することができます。
 不動産の登記事項証明書は、表題部の登記と権利部の登記があります。表題部は所在・地番・地積・建築面積・種類とかその不動産の物理的状況が記載されます。権利部は所有権・地上権・抵当権とかその不動産は誰のものでどんな権利が設定されているかの権利情報が記載されます。
 もともとは、地租および家屋税という制度があって土地台帳に基づいて税金を徴収していました。権利の登記簿は地所登記簿と建物登記簿として申請に基づき所有権取得等を登記してました。その後の不動産登記法の改正にともなって、土地台帳と建物台帳は表題部の登記事項となって権利移動も一元的に管理されて現在の登記事項証明書の形式になりました。
 不動産登記制度が整備された沿革は、権利関係を登録する役割もありますが、税金等を徴収するための国土情報ともいえます。

2.表題部の登記

 表題部の登記は、不動産の物理的現況を記載してます。不動産は一つの番号ごとに「1筆」として、土地であれば所在・地番・地目・地積、建物であれば所在地番・家屋番号・種類・構造、床面積(マンションは各部屋を表示する方法もあります)が記載されます。所在地番は昔の土地台帳から引用されているので住居表示(住所)とは違うことが多いです。変更が分かったら正確に変更登記をしなければなりません。
 例えば、土地の地積(面積)は昔の測量技術では誤差といえる数値が大きかったですが、最近の測量技術の精度は高いのでミリ単位の管理になっています。そのため売却や相続の時に計り直してみると登記事項証明書には100㎡なのに実測が120㎡ということもありますしその逆もあります。誤差が大きいほど国土の大きさは決まっているのでそのしわ寄せが隣地との交渉になったりすることもありますが、地積更正登記を行う必要があります。隣地との境目を「境界線」といいます。
 また、登記事項証明書は最初から備え付けてあるわけではないので、建物を新築すれば新しく創設しないと作られませんし、建物を解体すれば建物滅失の登記を申請して登記事項証明書を閉鎖しないといけません。それなので、表題部の登記が完了していないと権利部の登記申請はすることができません。銀行で住宅ローンで借りて代金を支払う場合、支払と同時に権利部の登記(抵当権設定)をしないといけませんのでそのスケジュール管理には注意が必要です。
 表題部の登記を委任する場合、土地家屋調査士の資格者に依頼します。土地家屋調査士は表題部の登記のスペシャリストになります。

3.権利部の登記

 権利部の登記は、「所有権」「地上権」「永小作権」「地役権」「先取特権」「質権」「抵当権」「賃借権」「採石権」の9種類があります。なんのこっちゃみたいな権利もありますが、誰が所有者でどこの銀行で借入れしてて土地の一部が鉄道敷きみたいな事が分かります。「所有権」に関する内容(所有者、差押、競売開始決定等)は「甲区」に、その他8種類については「乙区」に記載されます。
 登記する機会としては、土地・戸建て・マンションを買ったとき、不動産を相続したとき、事業用地を借地したときそのような場面が多いです。不動産登記事項証明書は誰でも見ることができますし、権利部の登記は第三者への対抗要件となります。仮に不動産を二重譲渡された場合、先に登記を備えた方が他方に対抗することができます。不動産売買であれば「売った、買った、お金を払った」が完了すれば成立しますが、第三者に対抗するためには権利部の登記が必要になります。
 権利部の登記を委任する場合、司法書士の資格者に依頼します。司法書士は権利部の登記のスペシャリストになります。

4.不動産登記の費用

 不動産登記の制度や種類の概要を話してきましたが、その費用はどのくらいなの?って思います。事例によってはまったく違うことがありますのであくまで参考値にしてください。
(表題部の登記)
・新築建物の登記(一般の住宅) 10~15万円程度
・地目変更(農地を宅地とか)  5万円程度
・種類変更(事務所を居宅とか) 5万円程度
・敷地の境界確定(一般住宅)  50万円程度(隣地の数×+10万円、官民は+30万円)
(権利部の登記)
・不動産売買に所有権移転登記と抵当権設定登記(一般住宅) 報酬15~20万円程度
・相続登記(自宅のみ、預貯金は生活口座程度)       報酬10~30万円程度

 権利部の登記には、別途法務局に支払う登録免許税がかかります。対象不動産の固定資産税評価額や借入金の金額に対して税率をかけて算出します。東京都の港区の土地100㎡とかであれば登録免許税だけで200万円くらいする場合もありますので、上記の金額は報酬の話であることで参考にしてください。相続に関しても、外国人がいたり所在不明者がいたら手間の分だけ報酬はかかりますので、相談してから依頼するように注意してください。

5.不動産登記は義務なの?

 表題部の登記には、期限付で登記をしないといけないルールがあったりします。権利部の登記には今まで登記完了していなくても特にペナルティを設けていませんでした。権利を取得したものはいち早く前述の対抗要件を具備したいから対価と交換で同日に登記申請するのが通常の取引慣行でした。しかし、相続登記は相続人が一定の要件を具備して財産承継の登記申請をしますので、登録免許税と報酬を支払って登記する価値のない土地、例えば原野商法で買ったような土地を登記してないケースは何万件もあります。そんな不動産が所有者不明土地として存在しているので、国はこれを解消しようと令和6年4月1日より相続登記を義務化して、相続があったことを知ってから3年以内に登記申請しない場合に罰則を設けました。登記事項証明書の住所と住民票上の住所は監督官庁が違うので連動してませんので、住所変更登記についても義務化します。
 本来、自己の権利主張するための権利部の登記ですが、不利益に対して制度設計がされていなかったために所有者不明土地がものすごい数になっています。
 現在法務局からの嘱託を受けてたくさんの司法書士事務所が所有者不明土地の相続登記に必要な戸籍収集を行っています。すごいものになると登場人物が80人とかになります。戸籍も100枚くらいになる相続もあります。相続人が分かっても国土の有効利用のためには、その先の制度改革が必要ですね。

6.まとめ

 不動産の登記制度は国民の権利と義務をまもる大切な制度です。税金回収のための制度もありますね。 
 表題部の登記は物理的現況がともなっていないと登記することはできません。
 権利部の登記は登記する内容の法律要件が整っていないと登記することはできません。
 いずれも、ご自身をまもるためには専門家の知恵を借りることをおすすめします。